titler

規量子スピン系の構築による新しい量子現象の探索


 磁性体の持つ磁気的性質の素(もと)は,有機ラジカルや遷移金属イオンの上に棲んでいる電子スピン達です。 電子スピンは純粋に量子力学的な量であるものの、どのような方向にも自由に向きを変えることができる小さな磁石として考えることができます。 一方、スピン量子数が小さく、かつ周囲に磁気的に結合できる仲間が少ない(低次元的な)ときや、スピン間の相互作用が競合する(スピンがフラストレーションを感じる)ときは、 電子スピン達が量子力学的な本性を現します。 このような量子スピン系では、 不連続に状態を変える量子的なスピンの性質を反映して,小さな磁石の集まりとして考えてしまうと説明の出来ない性質を示します。 量子スピン系を定量的に評価することは、超伝導体等のマクロな量子現象の理解、さらには新奇な現象の発現を目指す上で、非常に重要な研究です。 私たちの研究室では、 有機ラジカルや遷移金属を用いて様々な新規量子スピン系の合成を行っています。新物質開発に力を入れることが、 新たな基底状態や相転移などの物理現象の発見、及び電子のスピン自由度を生かしたデバイスの開拓につながると考えています。





な研究テーマ

ニトロキシドラジカルによるS ≥ 1の新規磁性体の合成


 分子内に複数配列されたスピン間の相互作用の符号はトポロジーにより設計でき、m-フェニレン基に2つのニトロキシド(NO)ラジカルを配置したBNO骨格では、約600 Kの分子内強磁性相互作用が働き、室温以下ではS = 1を形成します。
本研究テーマでは、NOラジカルの強い分子内強磁性相関に着目して、スピンのサイズを変化させることで、従来の有機ラジカル磁性体では報告例の少ないS ≥ 1の新規磁性体の合成を目指しています。


異種ラジカルを組み合わせたヘテロスピン系によるフェリ磁性体の開発


 有機ラジカル磁性体の研究において、強磁性体の実現は大きな目標です。金属を含まない磁石が実現すれば、新規材料やメモリデバイスに留まらず医療の分野にまで画期的な応用が期待できます。 しかし、有機ラジカルでは室温で磁石となるほどに強い強磁性的な分子間相互作用は形成し難いと考えられています。そこで、異なる大きさのスピンが反強磁性的に相互作用することで自発磁化が生じるフェリ磁性体の合成を試みています。 有機ラジカルはS = 1/2 を一つの単位とし、分子内に複数のラジカルスピン源を導入することでスピンの大きさや符号を制御することができます。これまでの研究で、2つのNOラジカルと1つのNNラジカルをベンゼン環のメタ位に置換したPNNBNOでは、 2つのNOラジカルによるS=1とNNラジカルのS=1/2が反強磁性的に結合して、3次元的な磁気秩序を示すことを明らかにしました。この結果は、世界初の有機フェリ磁性体として注目を集めました (Y. Hosokoshi et al., J. Am. Chem. Soc. 123 (2001) 7921)。 さらに、ベンゼン環をビフェニル環に置き換えたBIPNNBNOの合成や、他のラジカル種との組み合わせも進めており、ヘテロスピン系による新規フェリ磁性体の開発を目指しています。



フェルダジルラジカルを用いた新奇量子スピン系の構築


 従来の有機ラジカル磁性体では、分子のラジカル部にスピンが局在している場合が多く、ラジカル相関のパターンに多様性は無く、反強磁性一次元鎖を形成する場合が殆どでした。多次元的な磁気ネットワークや強磁性的相互作用を示す物質は 非常に少ないとこが知られています。ラジカル局在性が従来の有機ラジカル磁性体の磁気モデルの形成において、多様性を阻害する原因となっていました。そこで私たちは、非局在型のスピン密度を有するフェルダジルラジカルに着目しました。このラジカルは分子内の 多くの元素上にスピン密度が分布しており、分子接近の影響が大きく、複数の方向で磁気相関が現れることが期待されます。また、ラジカル相関のパターンが複雑になるために、分子間に強磁性相互作用が現れることも予想されます。フェルダジル ラジカルを持つ新規磁性体を合成することで、多次元的磁気ネットワークを持つスピン系、及び反強磁性と強磁性の両方の相互作用を含む複雑な量子スピン系の構築が可能になると考えました。
これまでに、ハニカム格子や強磁性鎖が反強磁性的にカップリングした梯子鎖などの様々な新奇スピン系の構築に成功し、特異な磁気状態の出現を観測しています。



遷移金属化合物によるフラストレーション系の合成

under construction...



Copyright © 2014 Hosokoshi Lab. All rights reserved.