「ねえ大家さん、今度の地震騒ぎでは買いだめでお店にモノがなくなりましたね」
「うむ。うちのばあさんも慌ててスーパーに行ったが、もう何もなくて、仕方なしに冷凍タコ焼きを一袋買ってきた」
「だけどこういうとき、何で真っ先にトイレットペーパーが無くなるんでしょう?」
「実に不思議な現象だな。そういえばオイルショックの時も、トイレットペーパーが店さきから無くなった」
「大家さんなら理由が分かるかと思って聞きに来たンですがね」
「これは大問題だぞ。この謎を解決すればお前も博士になれる」
「なれますか?」
「なれる。博士論文の題目は ”パニック時における異常心理:トイレットペーパー買だめの謎” だな」
「頑張ります。えーと、パニックになるとトイレに行きたくなる・・・と」
「いきなり飛躍しすぎじゃないか?」
「飛躍なんかしてません。あっしなんざ借金取りが来ると、必ずトイレに逃げ込む」
「先を続けなさい」
「それで座って考える。目の前にトイレットペーパーがある。もしこれが無くなったら大変と考える。だってトイレが使えなくなってしまいますもんね」
「食べ物ならご飯でもパンでもタコ焼きでも何とかなるが、出るほうはトイレだけだからな」
「そうです」
「ウオッシュレットもあるぞ」
「うちのはついてません。貧乏長屋だから」
「貧乏長屋で悪かったな。しかしトイレが使えなくなったら大変だ」
「大変ですよ。トイレットペーパーがいかに大切なものか分かるでしょう」
「昔は新聞紙も使えたがなあ」
「いつの話です。今はダメですよ」
「ラジオと新聞とどっちが役に立つかという漫才があって、ラジオで尻が拭けるか、というのが落ちになってたな」
「大家さん、いったい何の話をしていたんでしたっけ?」