新帰朝者の意見

 いきなり私事で恐縮だが、この場で近況報告をさせていただきたい。私は今年2013年の3月に大阪府立大学で二度目の定年退職を迎え、東京に戻った。いまは東京工業大学応用セラミックス研究所にご厄介になって研究を続けている。まだやっているのです!

 宮城県仙台市で17年、大阪府堺市で18年暮らし、35年ぶりで東京に戻ってきた。応用セラミックス研究所は田園都市線の終点に近いすずかけ台にあるので、毎日、渋谷でJRと田園都市線を乗り継ぎ、片道1時間半かけて通勤している。満員電車で通うのは実に高等学校以来のことだ。

 今回、通勤を始めたばかりの頃は非常にとまどった。とくに渋谷駅での乗り換えが大変だ。駅の構造がおかしいのだと思うが、人の流れが乱流状態で、とても疲れる。また、事故による電車の遅れが日常的になっていることにも驚いた。この原因の一つは、やたらと相互乗り入れをして路線を長くしたことではないだろうか。川越駅での人身事故の影響で、新木場駅まで電車が止まってしまうということもある。子供のころから、私鉄や国鉄の路線名とそれが走る町の雰囲気とは切っても切れないつながりがあったのだが、相互乗り入れによって、妙な具合に路線が繋がってしまい、私のような新帰朝者にとっては土地勘がくるって疎外感を感じる。なんで湘南電車が群馬県を走るの?! まあ怒ってもしょうがないことだが。

 いま思うと、東京に比べて大阪のほうが電車内の雰囲気はだいぶよろしい。とにかく東京 人大杉だ。女性のスカートの丈(また出た!)も、東京のほうがはるかに短い。よほど忙しいのかもしれないが、若い女性が電車の中でパンと牛乳の朝ご飯食べるのは止めていただきたい。また、車内での念入りのお化粧は、近頃では珍しくもなくなったが、私は「動く歩道」の上に立ち止まってお化粧している女性を今回初めて見た。

 と言いつつも、通勤を始めて3か月も経つとあら不思議、身体が無意識に反応して、雑踏の中をスイスイ歩けるようになってしまった。今では渋谷駅での乗り換えも、スウェイやダッキング、フェイントを交えた華麗なステップで、考え事をしながらでも楽にできるようになった。どうやら身体が覚えていたようだ。

                      (Dec. 2013)

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