流行歌の文法チェック
ちょっと古いが、言わせてもらおう。
- 月にやるせぬ わが想い(影を慕いて)
「やるせない」とはいうが、「やるせぬ」とは言わない。「やるせない」は形容詞だから、助動詞の「ぬ」はつかぬ。
- 雪にかわりがないじゃなし(お座敷小唄)
まったくのデタラメ。確信犯による日本語破壊。
- やると思えばどこまでやるさ(人生劇場)
ホントにどこまでやるの?
- 義理がすたればこの世は闇だ(人生劇場)
「すたれれば」が正しい。「廃れる」は下一段活用であって、五段活用ではない。「廃る」という五段活用の言葉もあるが、普通、仮定形では使わない。
- なのによ〜、なぜに目に浮く潮来笠(潮来笠)
「目に浮かぶ」とは言うが、「目に浮く」とは言わない。日本語って難しい。
- てんとう虫がしゃしゃり出て(てんとう虫のサンバ)
これは文法的には間違いではないが、「しゃしゃり出て」という語感の汚さ。なぜ「進み出て」ではいけないのか。可愛い女の子が、この歌のこの部分を歌う時、私はいたたまれない気持ちになる。
- 花の東京のド真ん中(恋の山手線)
本当の東京人は「ド真ん中」とは決して言わない。「東京のまん真ん中、大阪のド真ん中」である。
まあ、この他にもたくさんあるけどね。文語と口語がまぜこぜになっているもの(谷村新司や堀内孝雄の歌によくある)も、日本語としては、ほんとうは皆、間違いだ。それでも、妙チキリンな英語が意味もなく挿入される最近の歌よりは、羞恥心を掻き立てられる度合いの少なさにおいて、昔の歌の方がまだましだ、とおじさんは思うのであった。
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