お疲れ様

 皆さんの習慣に文句ばかりつけるようで恐縮だが、電子メールの出だしを「お疲れ様です」で始めることが多くなった。事務のかたから来るメールの冒頭は、ほとんど「お疲れ様です」か、さもなければ「お世話になります」だ。「お世話になります」と言われると、お世話になっているのは明らかにこちらの方だから、ビクゥとしてしまうし、朝からいきなり「お疲れ様」と言われると、どっと疲れが出るような気がする。

 電子メールは簡便さがイノチだから、いきなり用件に入ってもよさそうだが、どうもそれでは具合が悪いようだ。手紙の冒頭に、無意味な「拝啓」とか「前略」とかつけるようなものか。一時、こういう決まり文句は無しにして、自由な文章で手紙を書こうという動きがあったが、定型があるおかげで教養や文才のある無しに関わらず、誰でも気楽に手紙が書けたのだ。

 日本人のたしなみは、電子メールにまで及んで、メールの定型文が出来つつあるのかも知れない。そのうち「お疲れ様です」とか「お世話になります」と冒頭で言われても、手紙文の「拝啓」と同様、真面目に考えることもなくなるかも知れない。

 ただし、外国に出すメールで、これを英語に直訳して書いたりすると、おかしなことになるから止したほうがいいだろう。

                                    (May 2011)

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