オレガ族とタンタン族

 現代人はだいたい誰も目立とう目立とうと必死だ。四六時中、心の中で
「俺が、俺が」
と叫んでいる。激しい競争社会なので目立たないと埋もれてしまう。

 学会会場もおおむね、俺が俺がの大合唱と思ってよい。
「みんな、俺の研究の話を聞け」
「これは俺がやったことだ」
「俺の意見はこうだぞ」
羊頭狗肉、鬼面驚人はオレガ族の重要なテクニックだ。オレガ族の酋長みたいな人もいる。

 少数派だがタンタン族もいる。タンタン族は、淡々と凄い話をする。直接の面識はないが、K効果で有名なK先生などはその代表じゃないかと思う。ファインマンによるとオンサガーは大変、無口な人だったが、学会などでたまに発言すると、それは必ず重大な内容をはらんでいたそうだ。私の知っている実験家も、凄い実験をするのだが、その人の論文は淡々と始まって、淡々と終わってしまう。事実に語らせれば十分と考えているのだろう。タンタン族は徒党を組まないので酋長もいない。

 私もタンタン族になりたいと思うのだが、生来の軽佻浮薄が災いしてなれそうにない。せめて明るいオレガ族になりたいと念じている。

 

                               (Nov. 2006)

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