コアラ!コアラ!
2010年7月11日から15日まで、オーストラリアのブリスベン市で開かれた国際会議 EXCON'10 に出席した。これはオーストラリア、ヨーロッパ、アメリカ、日本を順繰りに回って2年ごとに開催されている励起子物理に関する国際会議である。今回は第9回目である。
到着した日に会場となるホテルNOVOTELでレセプションがあった。R. T. WilliamsやJ. Knoester それに今回のオーガナイザー J. Singhさんのような懐かしい顔に再会できたのは嬉しかったが、皆さん一様に老けている。この会議を支えて来た常連の研究者の姿が何人か見えなくなっているのも淋しい。やはり、何となく曲がり角に来ているのを感じる。日本の旧友とも会えたが、話題は定年後の過ごし方と病気自慢だ。
国際会議を立ち上げるのも大事業だが、継続的に維持していくのも大変のようだ。その当時に流行の先端だったテーマも、20年も経てばやはり時代に後れてくることは否めない。そのためEXCONでも、今回は励起子に捉われずに広くテーマを設定したようだ。
私の講演は最終日にあった。だいぶ以前に当時大学院生だったM君(今はPD)とやった話。外場中の電子の振る舞いについてM君が数値計算をしていて、ある公式を「発見」した。M君のこういう才能はすごいのだ。このM公式が、あまりに数値計算結果とよく合うので、それならと私が「証明」した。式を導いただけでなく、その意味を考えてみたら、意外と面白い展開があるかも知れないと気づいて改めて論文にしたのである。
この話を日本の学会でやっても、ほとんど反応がないのだが、今回は外国の研究者から質問が相次いで嬉しかった。終わった直後に電子メールで「数分前に聞いたが面白かった。この話はもうpublishされているか?」と問い合わせてくる研究者もいた。強○関電子系だけが物理ではないのだよ。
ところで、今回、初めて家人を伴って外国出張した。それで、会議の合間をぬって Lone Pine Koala Sanctuary へ出かけた。
ここはコアラが130頭以上もいる世界最大のコアラ保護区である。コアラ以外にもカンガルーやウオンバットやワライカワセミなどの珍しい動物や鳥にも会える。カンガルーは放し飼いで、やさしい目をしていて餌をやると食べる様子が奈良公園の鹿そっくりである。ウオンバットは、どうみても巨大なネズミそのものだ。ネズミ嫌いの人は、実物を見たら夢でうなされるかも知れない。
しかしなんと言ってもコアラ。コアラだ。日本の動物園では、どこでもコアラは客寄せの目玉として特別待遇されている。中には「コアラ館」とか称する別誂えの豪邸に住んでる奴もいる。中に見物に入っても、空調の効いたガラス張りの飼育室で眠っている姿を遠くから眺めるばかりだ。
その点、ローンパインではコアラは手を伸ばせば届きそうな所にうじゃうじゃいる。ウサギ小屋でウサギを飼ってるのと同じような感覚だ。
コアラが鈴なり(何匹いるでしょう?) 子供はかわいい
家人のたっての希望により「コアラ抱っこ」もしてきた。1回1600円ほどでコアラを抱っこできて、記念写真も撮ってもらえるのだ。私も並んでスリー・ショット。しかし、コアラにしがみつかれて家人が顔をこわばらせている間に写真を撮られてしまった。コアラはしっかりカメラ目線。一番美人に写っていたのはコアラだった。
抱っこされて写真のモデルになる仕事は、どうやらここのコアラのアルバイトになっていると思えるふしがある。人に触れられるのはストレスになるので、コアラは各自 労働時間のタイムカードを持っているらしい。さらにその証拠は、この写真 「コアラの老人ホーム」 である。わたし、これには泣かされました。
「ローンパインの老コアラたちは引退生活を楽しんでいます」 皆さん寝ている
脱力コアラ
今回、私はコアラを堪能した。
(July 2010)