平手造酒症候群
勤めている研究所のサロンで懇親会があった。大学院前期課程の研究中間報告会があり、その打ち上げの立食パーティーだ。
私は大学院生のY君とビールを片手に話した。
Y君:カヤヌマ先生、K(元プロ野球選手)の事件をどう思われます?
私: あれは平手造酒症候群だね。
Y君:ヒラテミキ??
私: あれ? 天保水滸伝を知らないの?
Y君:テンポースイコデン???
私: 神田お玉が池に千葉道場があってだな。
Y君:千葉真一ですか?
私: 天保年間に千葉真一がいるか。千葉周作だよ。
Y君:????
私: 剣術の名門道場。大学で言えば東大みたいなエリートコースだな。そこの天才剣士と言われたのが平手造酒。ところが酒乱のために破門され、酒に身を持ち崩してやくざの用心棒にまで落ちぶれてしまう。
Y君:??????
私: それで最後はやくざ同士の出入りで死んじゃうの。大利根河原で。
Y君:??????
私: 何の話をしていたんだっけ?
Y君:Kのことです。
私: おお、そうだった。 要するに過去の栄光にすがり、あるいは過去の栄光を忘れるためにだなあ、平手造酒は酒に溺れ、Kはクスリに溺れたわけだ。だから平手造酒症候群。
私が 「利根の川風〜よしきりの〜」 と歌いだすとY君は向うに行ってしまった。
(Feb. 2016)