冬の句

 季節がら、冬の俳句は風景句より人事の句におもしろいものが多い。恋の句や恋を感じさせる句も多い。
以下、すぐに出てくるのを並べてみる。どれも歳時記にあるような有名な句ばかりだが、記憶に頼って書くので作者名を覚えていないものもある。

   雪ふるといひしばかりのひとしづか    (室生犀星)

   雪はげし抱かれて息のつまりしこと    (橋本多佳子)

   雪をんなこちふりむいていたともいふ   (長谷川素逝)

   雪女郎おそろし父の恋おそろし       (中村草田男)

   雪兎きぬずれを世に残したる        (宇佐美魚目)

   目を入れて亡き子に似たる雪うさぎ    (作者名失念)

   手袋をぬぐ手ながむる逢瀬かな      (日野草城)

   手袋をぬぐたび罪を犯しけむ        (作者名失念)

   手袋の手をふる軽き別れあり        (池内友次郎)

   幸を言い手袋の巨人永遠に去る      (作者名失念)

   衰運の卦の手袋を落としけり        (久保田万太郎)

   けもの臭き手袋呉れて行方知らず     (西東三鬼)

   寒燈のひとつひとつよ国破れ        (西東三鬼)

   少年を枝にとまらせ春待つ木        (西東三鬼)

自作もひとつ

   マスクしてめぢから強きおんな来る


                                           (Feb. 2012)

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