笑顔批評

 誰も褒めてあげないので言うのだが、麻生太郎という人は笑顔のよい政治家だ。外交が得意というだけのことはある。彼以前の総理大臣たちの顔を思い出して頂きたい。表情の豊かな政治家としては、最近ではかろうじて小泉純一郎が思い浮かぶ程度だ。小沢一郎にいたっては、なんともはや・・・。


  米国国務長官のヒラリー・クリントンを、私はあまり好きではなかったが、先日、アジア外交の第一弾として日本にやって来た時のパフォーマンスは見事だった。人を蕩かすような笑顔とはああいうのを言うのだ。外交で笑顔を振りまいて、損をするようなことはない。本心で何を考えているのかは別にしても。


 日本人と外国人、とくに米国人の表情の豊かさの違いは大きい。おおやけの場で、日本人が笑うと妙にこわばって泣き顔のようになる。かって共に大相撲の横綱を張っていた貴乃花とハワイ出身の曙を比べてみるとよく分かる。曙は怖い顔で、ほとんど悪相と言ってもよいくらいだった。これに対して貴乃花は整った顔立ちで、日本的な美男子の部類の入るだろう。ところが、あるお役所のキャンペーンポスターに、二人が並んで写っているのを見て、私は意見を変えた。曙の笑顔の優しさに比べ、貴乃花の顔の表情の固いこと。善人と悪人の逆転である。


 想像するに、この違いは 子供のころからの家庭や学校での訓練の違いによるのだろう。さらに遡れば、社会における人間関係のあり方の違いというところまで話が行くかもしれない。東洋人と西洋人の顔の筋肉の違いではあるまいな。

 日本では「笑う」ことはときに罪悪視すらされていた。「武士は年に片頬」(武士たるもの、一年に一回、片頬で笑う程がよい)である。

 いまさらあんな笑顔を振りまけるかい、という人(私もふくめて)は、いっそ小沢一郎スタイルで行くのがいいかも。

                                 (April 2009)

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