ヘンギさんがやって来た

アウグスブルク大学のP. Hanggi教授が2004年3月16日から10日間ほど私たちの研究室に滞在した。ヘンギさんの行ったセミナーは以下のとおりである。

ヘンギさんは古典系、量子系を問わず非平衡動力学問題を幅広く研究している理論家である。私たちの数理工学科にも非線形動力学、複雑系に関する強力な研究グループがある。そこでヘンギさんを囲んで次のような教室セミナーを開いた。

これらのセミナーのレジュメを載せておく。

ヘンギさんはヨーロッパとアメリカとイスラエルに沢山の共同研究者を持ち、350編以上の論文を書いている。Rate Processに関するレビューは、これまでに1500回以上引用されている。(ヘンギさんは正確にその回数を言える。)計算すると3日に1回は引用されていることになる。

ヘンギさんは1年の半分ぐらいは出張で世界中を動き回っているようだ。重いアタッシュケースに旧式のノートパソコン入れて持ち歩き、目的地に着くとパソコンをインターネットに繋いで自分のホームページを開く。そこには自分の論文リストがあり、すべての論文がダウンロードできるようになっている。議論の最中に「ちょっと待て」と言って、論文をダウンロードし「これは非常に重要な研究である」と言って渡して呉れる。

ヘンギさんの知識の広さは驚くばかりである。複雑系から量子コンピュータまで、細部にわたり知らないことはないといった有り様である。しかし、ときどき間違うこともある。ある日、私の部屋に入ってくるなり
「お前の論文に間違いとミスプリントをたくさん見つけたぞ」
と言う。それで議論になった。間違いではないことを、ひとつひとつ説明してゆくとやっと納得してくれたが、最後に
「うー。ノーテーションが悪い。悪すぎる。これでは誰も理解せんだろう。」
と言って出ていった。

私はヘンギさんから、納得するまでその場でとことん議論する姿勢を学んだ。おかげで4時半に終わる予定のNLCQセミナーは7時半になっても終わらなかった。F君の講演の時には、前に出ていってF君のOHPにいきなり自分のアイディアを書き込みしてしまった。これぞハイジャック!ヘンギさんは、観光で訪れた奈良の大仏さんの前でも物理を語り続けたのである。

ヘンギさんが物理の次にこよなく愛するのは女性、とりわけ美しい女性であるらしい。しかし、私はこれについては多くを語ることが出来ない。

3月25日、ヘンギさんが帰って行った!